1955(昭和30年)/5/24公開 84分 モノクロ スタンダード 映倫番号:1814
配給:東映 製作:東映
生まれついてのみなし児の境遇から親を恨み、刺青の異名をとった町火消し・野狐三次の恋と義侠と男意地の渡世を描き、胸のすく啖呵と喧嘩、美しい人情の涙など仁侠時代劇の迫力と妙味をつくす傑作篇。
年に一度の神田祭。神輿で賑わう神田明神の境内で、呉服商上田屋の娘お絹に無態を働く加賀鳶取締役・古市弥十郎を見事な啖呵と度胸で手玉に取った、威勢のいい若者の姿があった。三次という名の若者は生れ落ちてからの孤児で、背中に彫った野狐の刺青から野狐三次と言われる男だ。その光景を見ていた町火消し「ろ」組の棟梁仁右衛門は、三次を身内に入れることにした。この喧嘩騒ぎの際に、三次は親の形見の牡丹蒔絵の印籠を落としてしまった。それを拾った御直参のお数寄屋坊主河内山宗俊は、印籠から三次の実の父が加賀藩重役・伊集院帯刀だとかぎつけ、帯刀を強請って印籠を百両で売りつけた。その頃三次は仁右衛門一家のもと、纏持ちになることを夢見て修行を続けていたが、古市は三次を逆恨みし続け、加賀鳶組頭の滝五郎をあおって仁右衛門と対立させていた。そして神田淡路町での火事で一番纏を争った仁右衛門の息子藤吉は、加賀鳶の悪計に乗せられて瀕死の火傷を負わされてしまう。「ろ」組の纏も加賀鳶に奪われ、藤吉は死に、仁右衛門も心痛のあまり病床に倒れてしまった。三次は組の名誉を背負って一人滝五郎の元へ纏を奪い返しに出向く。滝五郎一家に取り囲まれ危機に陥る三次を、通りかかった帯刀が救った。その際、三次の出生の由来を聞いた帯刀は、三次が実の息子だと始めて知るのだが、名乗ることはせずに、印籠を三次に返して立ち去るのみだった…。